27. 「オフシーズン」の正解はどこにある? ― 日本・ニュージーランド・スペイン、三カ国の休み方から見えてくるもの ―

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導入|「うちの子、全然休んでないけど大丈夫?」

「オフシーズンって、うちの子は何をすればいいんでしょうか?」

保護者の方からこういう質問を受けるたびに、実はすごく難しいテーマだなと感じます。というのも、僕自身が日本とニュージーランド、両方でプレーしてきて痛感したのは、この二つの国、「オフシーズン」に対する考え方がまるで正反対だということです。

日本にはオフシーズンがほとんどありません。一方でニュージーランドは、サッカーのシーズンが1年のうち半分程度しかない。同じ「育成年代の1年間」でも、こんなに設計が違うのかと、最初は正直驚きました。

今日はこの対照的な二つの国のあり方を比べながら、休むことについて僕なりに思うことをお話しします。

日本:オフシーズンが「存在しない」という現実

日本の育成年代、特に部活動やクラブチームでプレーしていると、1年を通してほぼ休みなく練習と試合が続きます。夏休みも冬休みも、休むどころか合宿や大会が組まれる。「休む」という選択肢自体が、文化としてあまり存在していないように思います。

これは裏を返せば、それだけサッカーに向き合う時間が長いということでもあります。技術は反復の中で身についていくものなので、その意味では大きな強みです。

ニュージーランド:シーズンはたった半年

一方でニュージーランドは真逆です。サッカーの公式なシーズンは冬季の約半年程度で、それ以外の時期はラグビーやクリケット、ネットボールなど、子どもたちは全く違うスポーツに取り組みます。1年間、サッカー一色になることはまずありません。

これは「サッカーに使える時間が少ない」という見方もできますが、同時に色々なスポーツを経験できるという意味でもあります。

ただその一方で、サッカーに触れる絶対的な時間が短いことは、技術面だけでなく「サッカーインテリジェンス」の部分にも影響してきます。状況判断や駆け引き、チームとしての約束事の理解といった部分は、繰り返しサッカーに向き合う中で少しずつ蓄積されていくものです。シーズンが半年しかなければ、それだけこの蓄積の機会も限られてしまう。ニュージーランドの選手を見ていて、身体能力の高さに反して、局面での判断の速さや駆け引きの引き出しの少なさを感じることがあるのは、この構造が一因にあるのではないかと僕は考えています。

両方に、はっきりとしたメリットとデメリットがある

僕は、率直に言うと「日本はやりすぎ、ニュージーランドは少なすぎる」と感じています。それぞれの長所と短所を整理してみます。

日本のように休みなくサッカーに取り組むことは、技術の定着やサッカーへの没入度という点で強みになります。ただその反面、体が出来上がっていない時期にオーバーユースの怪我を招きやすく、また他のスポーツを通じて身につくはずの多様な体の動かし方を学ぶ機会を失ってしまいます。

一方でニュージーランドのように、色々なスポーツを掛け持ちすることは、体の使い方の引き出しを増やすという意味でとても価値があります。ラグビーで培ったコンタクトの強さや、クリケットで養われる目と手の協調性は、回り回ってサッカーにも生きてきます。またオフシーズンにしっかり体を休められることは、成長期の子どもたちの体の成長を促すという点でも理にかなっています。ただそれでも、トップレベルを本気で目指すのであれば、半年間だけのサッカーでは絶対的な活動量が足りないという現実も、同時に存在します。

僕がオフシーズンをほとんど知らずに育って気づいたこと

正直に言うと、自分自身はオフシーズンというものをほとんど経験せずに育った選手の一人です。振り返ってみると、「休むことも成長のうち」だという感覚を持てないまま、ずっとボールを蹴り続けていました。体が末端まで出来上がっていない時期に休まず負荷をかけ続けたことが、今の自分の体のどこかに影響しているんじゃないかと、今になって思うことがあります。

だからこそ僕は、オフシーズンを「サッカーをやらない期間」ではなく「サッカーをもっとやりたくなるための期間」として捉えるべきだと考えています。ずっとサッカー漬けでいると、気づかないうちに”当たり前”になってしまう。逆に少し離れる時間があるからこそ、シーズンが始まった瞬間のあの高揚感や、ボールを蹴りたくてたまらない気持ちが生まれる。この「溜めて、爆発させる」というサイクルこそが、育成年代の選手を長く、そして健康的にサッカーに向かわせる原動力になると、自分の経験を通して強く感じています。

スペインという「第三の道」

では、この二つの国の間には何もないのかというと、そうではありません。僕が参考になると思うのが、スペインのモデルです。

スペインの育成年代は、9月末から5月末まで、毎週末公式戦が行われる本格的な通年リーグ制を採用しています。年間の公式戦数は日本よりも多いくらいで、活動量そのものは決して少なくありません。

それでいて、1回あたりの練習時間は驚くほど短く抑えられています。小学生年代であれば1回75分程度が目安で、それ以上長く練習する文化がそもそもありません。理由もシンプルで、試合自体が60分程度なのだから、それ以上の練習は必要ないという考え方が浸透しているのです。そして夏には約2ヶ月間のまとまったオフがあり、シーズン中にも「セマナサンタ」と呼ばれる1週間ほどの休みが設けられています。

つまりスペインは、「休みなく詰め込む」日本型でも、「シーズン自体を半分にする」ニュージーランド型でもなく、「通年で続けながらも、量と質のバランスを取り、しっかり休む期間も確保する」という、第三のやり方を取っているわけです。

Glocal Footballが目指す環境

この3カ国を見比べてみて僕が思うのは、「休むこと」と「やり込むこと」は対立する概念ではなく、両方セットで初めて選手を成長させるということです。

だからこそGlocal Footballでは、ニュージーランドのようにオフシーズンが来たら完全にサッカーから離れるのでも、日本のようにオフなく詰め込み続けるのでもなく、「サッカーがやりたい」という気持ちが芽生えたときに、いつでも取り組める環境を通年で提供したいと考えています。クライストチャーチには、まだそういった環境がそれほど多くありません。ラグビーシーズンが終わっても、ネットボールシーズンの合間でも、気持ちが向いたときにボールを蹴れる場所がある。それが、子どもたちの中に眠っている「サッカーをもっとやりたい」という気持ちを、無理なく育てていくことに繋がると信じています。

そしてこの通年での関わりの中で、僕がもう一つ大切にしているのが、先ほど触れたサッカーインテリジェンスの部分です。Glocal Footballでは、ただボールを蹴る時間を提供するだけでなく、個人戦術やグループ戦術を一つひとつ丁寧に落とし込んでいくことを大切にしています。1対1の局面でどこを見てどう判断するか、グループとしてどう連動してボールを奪いにいくか。こうした部分を、限られたシーズンの中で漠然と経験させるのではなく、通年を通して継続的に、そして意図的に積み上げていく。それによって、ニュージーランドという環境の中でも、判断力や駆け引きの引き出しをしっかり育てていける選手を送り出したいと思っています。

世界には色々な「サッカーとの付き合い方」があります。どれが正解ということではなく、それぞれの国のやり方を知った上で、自分の子どもに合ったバランスを一緒に見つけていけたらと思っています。

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